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MK通信(85)  第8回党大会報告にみられる朝鮮の核戦力と朝米関係

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 米国による対朝鮮敵視政策がより激化し核の脅威、軍事的圧力が甚だしく強まる中で、朝鮮労働党第8回大会では国防工業を飛躍的に強化、発展させるための中核的な構想と重要な戦略的課題が提示された。

国防工業における戦略的課題

 党大会報告で言及された戦略的課題の核心は、すでに「国家核戦力を完成」させた土台の上に、核戦力をより高度化させ、原子力潜水艦をはじめとする最先端兵器を開発、保有し、米国の軍事的脅威を抑止して朝鮮半島の平和と繁栄を担保するというもの。

 党大会報告にみられる課題を整理、列挙すれば次の通りだ。

 ▲核兵器の小型・軽量化、戦術兵器化をさらに発展させさまざまな手段に適用できる戦術核兵器を開発する。

 ▲超大型核弾頭の生産も持続的に進める。

 ▲1万5000キロ射程圏内の任意の戦略的対象を正確に打撃、掃滅できる命中率をさらに向上させて、核先制および報復打撃能力を高度化する。(朝鮮労働党創立75周年祝賀閲兵式場で11軸自走発射台車に装着されて公開された新型の巨大なロケットのこと)

 ▲多弾頭個別誘導技術をいっそう完成する。(最終段階)

 ▲近いうちに極超音速滑空飛行戦闘部を開発、導入する。(試験政策段階)

 ▲水中および地上固体エンジン大陸間弾道ロケットの開発を計画通りに推し進める。

 ▲原子力潜水艦と水中発射型核戦略兵器を保有する。(設計完成)

 ▲近いうちに軍事偵察衛星を運用して偵察情報収集能力を確保する。(設計完成)

 ▲500キロ前方縦深まで精密偵察できる無人偵察機をはじめとする偵察手段を開発する。(設計完成)

 一部では核戦力開発計画を詳細に明かししたことについて疑問視、「虚勢」とする指摘もある。朝鮮による核戦力の高度化を見たくない人たちが「虚勢」とかたづけ目をつぶることは自由だ。朝鮮の核抑止力開発過程を、つぶさに、一貫してウォッチしてきた筆者の目から見れば、公開したのは技術問題をクリアして設計を完成させたものに限られているように見える。すなわち、時間の問題はあるが「近いうち」に実行可能な計画だけを公表したように見える。

強対強で立ち向かう

 朝鮮の核戦力高度化は「アメリカで誰が権力の座についてもアメリカという実体と対朝鮮政策の本心は絶対に変わらない」(報告)との判断に基づいている。

 このため朝鮮はトランプ政権下でのように、朝米交渉に期待をもち時間を浪費することはないとみられる。

 トランプ大統領シンガポール会談(2018)時に発表された共同声明に反して、ハノイ(2019)で「リビアモデル」を持ち出した。この過程で朝鮮は、敵対政策にしがみつき体制崩壊を狙う米国との交渉は時間の浪費との判断に至り、「非核化対制裁解除」の枠組みによる交渉に終止符を打ったと言える。

 朝鮮はこのような教訓に基づき、党8回大会で提示した核戦力高度化の課題を最速で実現する道を粛々と歩むとみられる。

 米韓日の、一部のいわゆる専門家、研究者、さらには政府当局者が述べる「朝米交渉の早期再開」は根拠のない期待でしかない。またトップダウンボトムアップ云々も、ハノイ以来朝鮮が朝米交渉を中断させた経緯を見れば何の意味も持たない。さらにバイデン政権の“優先順位”を云々する向きもあるが、ピント外れだ。朝鮮は非核化交渉を行わない、と言っているのであり、核高度化の道を最速ですすめようとする朝鮮にとっては逆に好都合だ。

大会報告では米国の敵視政策撤回を求める姿勢を明確に打ち出しており、朝鮮の先武装解除、非核化を求めるための朝米交渉は成立しそうにない。

 大会報告で、「対外政治活動を朝鮮革命発展の主な障害、最大の主敵であるアメリカを制圧し、屈服させることに焦点を合わせ、志向させていかなければならない」「新しい朝米関係樹立のキーポイントは、アメリカが対朝鮮敵視政策を撤回するところにあるとし、今後も強対強、善対善の原則に基づいてアメリカに対するであろうというわが党の立場を厳粛に言明した」ことを見れば明らかだろう。「強対強、善対善の原則」という指摘とともに、「敵対勢力と強権を振りかざす大国に対しては強対強で立ち向かう」と言明していることを忘れないほうがいい。

破綻した歴代民主党政権の崩壊戦略

 バイデン政権の国務長官および国務省幹部に就任するとみられる人物の口から強硬論が聞こえてくる。

 一言で“圧力を強めれば交渉に応じざるを得ない”というもの。

 冷戦解体以後30余年、民主党クリントン政権オバマ政権と16年間政権の座にいた。

クリントン政権は朝鮮に対する軍事攻撃を検討したが勝つ見込みが立たずあきらめ、後半には“ペリープロセス”を進めた。一度は平壌核施設への空爆を検討したペリー氏によって進められたものだが、“朝鮮の5年以内崩壊”を予測したCIAの秘密報告を背景に進められたもので、朝米関係を改善するかのような言動はポーズに過ぎなかった。またオバマ政権の「戦略的忍耐」は、“何もしない”のではなく、その実態は、軍事経済的圧力を強化しながら、韓国の保守政権を動員して行った「低強度紛争戦略」であった。

 このすべての崩壊戦略が失敗し、朝鮮の「国家核戦力」の完成をもたらした。宣言はトランプ政権下でなされたが、その土台はオバマ政権下で築かれたのは周知の事実だ。このような事実を無視して朝鮮核武装の責任がトランプ政権にあるかのごとく非難しているのは実に滑稽だ。

心理学に言う「防衛機制」と「否認」

 朝鮮が米国の強硬策に屈することはない。またある日突然崩壊することもない。

 過去30年にわたった圧力政策が跳ね返され、朝鮮の「国家核戦力完成」を招き、核兵器の高度化が進められているにも関わらず、制裁圧力の強化を叫んでいる背景には、根拠のない朝鮮崩壊論があるように見える。ポンペオはハノイ会談を前にして、米メディアに朝鮮半島東西ドイツのようなことがいつ起こるかわからないと、真剣に語っていたことがある。もちろん根拠は何もなく、ポンペオが望む幻想に過ぎなかった。

 また駐韓米軍司令官は、昨年10月の閲兵式で登場した「モンスター」と呼ばれたICBMを記者団の前で「模型」と言い放った。

 心理学に「防衛機制」というのがある。受け入れがたい状況、または潜在的な危険な状況に晒された時に、それによる不安を軽減しようとする無意識的な心理的カニズムである。心理的カニズムにはさまざまなものがあるが、そのうちの一つに「精神病的防衛」の「否認」なるものがあるそうで、「不安や苦痛を生み出すようなある出来事から目をそらし、認めないこと」と説明されている。

 筆者は、例えば朝鮮の人口の半分が飢えに苦しんでいる、または経済はどん底で調味料さえない、などとする米韓による虚偽の発表や宣伝が、朝鮮を貶めるためのプロパガンダと理解してきた。

 しかし、ポンペオの発言や“朝鮮崩壊論”を何度も繰り返すCIA、韓国に大きく水をあけられた朝鮮の“崩壊は必至”と繰り返す韓国の大統領はじめ政府当局者の直、間接的な発言を見ると、どうも心理学に言う「防衛機制」に陥っているのではないかと思えてならない。

 駐韓米軍司令官も、CIAも「火星15」も見たくないが、より威力あるICBMを見たくないのであろう。また、朝鮮の貧困と混乱を空想し、崩壊を今か今と待ちわびる人たちにとって、朝鮮の経済発展は悪夢以外の何物でもない。

 強硬論、圧力論にしがみつく姿勢の深層に「防衛機制」なるものが存在している蓋然性は高く、圧力路線は失敗を繰り返すしかないだろう。

 朝鮮の自主国防、自力更生が何たるかを知らず、また知ろうともせず、立案される政策の失敗は必至だ。敵を知らずしての“勝利”は妄想に過ぎない。(M.K)