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MK通信(68) 朝米首脳親書をめぐるトランプ大統領の思惑

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 わが国の最高指導部は米国大統領に手紙を送っていない!
 朝鮮外務省報道局対外報道室長が19日、トランプ大統領金正恩委員長から手紙が届いたとの18日の報道内容を否定した。
過去に例がない驚くべき珍事件だ。もしトランプ大統領が届いてもいない手紙が届いたと発表したのであれば意図は何なのか?
朝鮮外務省報道室長は「われわれは事実無根な内容をマスコミに流している米国指導部の企図を集中分析する計画である」と述べている。
集中分析の結果は待たなければならないが、今年に入ってトランプ大統領金正恩委員長にあてた親書と朝鮮側の反応を見れば、今朝米間で何が起こっているのか推察することは可能だ。

背景に「新しい道」

今年に入って金正恩委員長にトランプ大統領が親書を送ったのは1月と3月の2回。その都度朝鮮側は談話を発表しているが、1月11日に金桂冠外務省顧問、3月22日に金與正党第1副部長、3月30日に朝鮮外務省の新任対米協商局長が談話を発表している。
1月の親書は、金正恩委員長の誕生日を祝うもの(金桂冠談話)で、3月の親書は、新型コロナウイルス防疫問題に関連して「真心こもった支援構想」を盛り込み「緊密な意思疎通を懇請」(対米協商局長談話)する内容であった。
トランプ大統領が、金正恩委員長からの返信がないにもかかわらず3か月の間に2回も親書を送り「緊密な意思疎通を懇請」した背景には、朝鮮が今年初から歩み始めた「新しい道」がある。
昨年2月のハノイ首脳会談で米国が「ビックディール」を持ち出したことは周知の事実。これに対し朝鮮は「ビックディール」は「リビアモデル」の焼き直しで、朝鮮の体制崩壊に目的があると非難、昨年末までに「新しい計算法」を提示することを要求、米国が対朝鮮敵対政策を撤回しない限り「新しい道」を模索すると警告していた。
この警告通り朝鮮は昨年12月党全員会議を開き「正面突破戦」と名付けた「新しい道」を示し朝米対話に終止符を打った。自立発展、自強繁栄で経済制裁を突破し、核抑止力の上向き調整で軍事的圧力に対抗するのが柱。さらにトランプ大統領が朝米対話の成果としていたICBMの試験発射中止などの公約も守る相手が存在しないとして破棄した。
朝鮮が「新しい道」を選択したことによって、朝鮮に対する関与を続け、朝鮮の実質的な核凍結を自らの成果として米大統領選挙で利用するとともに、朝鮮を圧力と制裁でじわじわと追い詰め体制転覆を計る米国の戦略が破綻に直面することになったのである。
トランプ大統領が今年3月までの間に2回も親書を送り、個人的な親交関係を強調して朝米対話の再開を模索したのは戦略破綻を回避するためであったと言える。
朝鮮側はトランプ大統領の親書に対し、それに答える親書を送るのではなく、党と外務省幹部の談話で立場を明らかにした。トランプ大統領が立て続けに2回も親書を送ったことが異例なら、朝鮮が幹部談話で答えたのも極めて異例なことであろう。朝鮮に対する敵視政策を維持したまま関与を続け目的を果たそうとするトランプ大統領の強い執着を垣間見ることができる。

誘引策にすぎない

上述の3つの談話で朝鮮側は、両国指導者の親交関係については高く評価したが、個人的な親交関係が対話や関係改善につながる状況にないと強調している。
金桂冠外務省顧問は、両国指導者の「親交関係を土台にもしかしたらわれわれが米国との対話に復帰するのではないかという期待感を持つ」のは愚かだと指摘、「対話の成立は米国が、われわれが提示する要求事項をすべて受け入れる条件でだけ可能」と強調した。また金與正党第1副部長は「両国に力学的に、また道徳的に平衡が維持され、公正さが保障されてこそ両国関係とそのための対話についても考えてみることができる」と、敵対政策を撤回しない限り対話再開はないとの姿勢を再度鮮明にした。さらに対米協商局長も「朝米両首脳の親交がいくら立派で堅固であっても米国の対朝鮮敵視政策を変化させることができず、米国がそれ程にまで唱える対話再開も、結局はわれわれが行く道を止めてみようとする誘引策にすぎない」と指摘、「いかなる威嚇やトリックもわれわれには通じない」、朝鮮に「手出しするな。手出しすれば怪我をする」とまで述べている。
個人的な親交関係は評価するが、米国が掲げる対話の看板は「われわれの行く道を止めてみようとする誘引策」と一蹴、朝鮮が朝米対話にまったく興味を示していないことがわかる。
トランプ大統領の朝鮮に対する2度にわたる「親書外交」の失敗は明らかだ。

差し出がましく僭越

にもかかわらずトランプ大統領は18日に、朝鮮が送ってもいない手紙が届いたと発表したばかりか、文在寅韓国大統領との電話会談で架空の手紙に言及しているというから驚かずにはいられない。韓国側の発表によるものだが、トランプ大統領が先に手紙が来たと言及し、文在寅大統領が米国の「積極的な対北関与を高く評価」したと報じられている。
架空の手紙が首脳会談で事実のように語られたことは滑稽でもあり、驚きでもあるが見落としてはならないのは、トランプ大統領の親書外交が文在寅大統領を関連させる形で進められたことだ。
1月の親書の時、トランプ大統領は直接朝鮮に送ったことは知らせず韓国高官に親書を届けるよう依頼した。また3月に「コロナ支援」を申し出たトランプ大統領の親書に先立ち文大統領は朝鮮にコロナ協力を一方的に提案している。さらに架空の手紙が語られた電話会談時にも両首脳は「コロナと関連して対北支援原則を再確認した」と報じられている。
金正恩委員長と2回首脳会談を行っている文大統領を仲立ちさせることで、朝鮮の朝米会談復帰を実現させるのがトランプ大統領の思惑であったと思われる。
しかし文在寅政権は韓米ワーキンググループが作られたとき(2018年11月)からその檻に閉じ込められ朝鮮の信頼を失っており、文大統領を仲立ちさせること自体が誤った判断である。金桂官朝鮮外務省顧問が1月11日に発表した談話で、文在寅政権に対し「仲裁者の未練」が残っているようだとしながら「南朝鮮金正恩国務委員長とトランプ大統領の親交に差し出がましく割り込むのは少し僭越なこと」と非難したことを見ればわかる。
 文在寅政権は米国の朝鮮敵視政策に乗ってトランプ政権の関与政策に加担すべきではない。南北関係を悪化させるだけで得るものは何もない。
 朝鮮が米国の敵視政策に対抗する新しい道を歩みだしたことで、シンガポール朝米首脳会談に始まる朝鮮半島の非核化をめぐる朝米会談には終止符が打たれ局面は根本的に変化した。
 トランプ大統領はこの変化を受け入れ難いのであろう。大統領選挙に向けて誇れる対朝鮮外交の成果は崩れ去り、朝鮮に一方的非核化を強いる関与の道も失われたからだ。
 米国の対朝鮮敵対政策が招いた結果である。「親書外交」で悪あがきしても道は開けないことを早く悟るべきではないか。(M.K)