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【解説】米日韓の国民意識を巧みに利用するプロパガンダの罠

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金正恩委員長が5月1日、順川リン肥料工場の竣工式に参加して健在ぶりを示したことで、同委員長の「健康異常説」はでっち上げられたブラックプロパガンダであることが証明された。

 本サイト解説蘭で重ねて主張した通りである。

 韓国の情報機関である国情院の管理下に置かれ、米NEDから資金援助されている「デイリーNK」がでっち上げ米CIAがCNNを使って拡散させた。(本サイト解説蘭の「【解説】一日で破綻したCIAによるブラックプロパガンダ米大統領自身が否定」参照)

金魚鉢の金魚

 朝鮮の指導者の健康問題をねつ造したプロパガンダはこれまで執拗に繰り返されて来た。米韓の情報機関が仕組み、米日韓のマスコミを総動員して騒ぎ立てるパターンはいつも同じだ。これからも米韓による黒色宣伝が繰り返される可能性は高く、その手法を振り返ってみることには意味があろう。

 プロパガンダは米日韓に共通する朝鮮に対する悪いイメージと米国を絶対視する国民意識をベースに巧妙に仕組まれる。反共、反朝鮮敵対意識を強く持つ、韓国の新聞などが先陣を切る場合が多い。今回は「デイリーNK」だ。

 しかし今まで同一のパターンで繰り返されてきたために「デイリーNK」や「朝鮮日報」が書いてもあまり信じられなくなってしまった。そこで登場するのが、米CIAとマスコミだ。CIAによるでっち上げや謀略は多く暴露されているが、なぜか米日韓では絶対と言っていいほど信じられている。

 「デイリーNK」情報では広がらなかったものが、CNNがCIAを情報源に報じたとアナウンスしただけで広く信じられ広がった。

 これに加え、偽情報が具体的に、状況に合わせて巧妙に作られていることも人々が騙される要因になったと思われる。

 問題は巧妙にでっち上げられた情報に接する人々の心理だ。よほどこの手のプロパガンダに慣れている人以外は何の疑いもなく「健康異常」という枠の中に意識が閉じ込められてしまう。まるで金魚鉢に入れられた金魚と同じで、思考、意識、心理がある枠に閉じ込められ、その状態に気が付かない。こうなれば成功だ。「健康異常」を裏付けるどんなに雑な情報でも、偽情報でも信じて妄想を膨らませて空想の世界を現実の世界と勘違いして「死亡説」も難なく信じてしまう。雪だるまのようにだ。プロパガンダの罠と言えよう。

 今回も朝鮮の指導者が健康であることを示すサインは数多くあった。真っ黒に塗られた紙、この塗られた状態を出発点にしている限りサインを見つけるのは不可能だ。黒いペンキを一度剥がして紙が白い状態から見直せばすぐに気づけるサインが多くあった。一度立ち止まって、CNNだからと言って安易に信じず、一報を流した「デイリーNK」情報の真偽を、朝鮮側の動きもチェックしつつ見てみれば、なんとなくでも「デイリーNK」情報の異常さに気づき、一歩引いて状況を見守ることも可能になったはずだ。

朝日新聞の偽情報

 4月26日、朝日新聞は中国軍が50人の医療団を朝鮮に派遣したと報じた。「健康異常説」に傾いた人々は、当然のように信じただろう。意図はどうあれプロパガンダに加担した形だ。

 この内容は朝日新聞に先んじてロイターが報じていた。欧米のマスコミがこの手段で朝鮮指導者の健康異常を煽った過去があり、極めて疑わしい報道であった。

 朝日新聞の報道も、一歩引いて考えれば不思議なことが数多くあった。なぜ50人も必要なのか?いつ?交通手段は?いずれも曖昧。さらに朝鮮の指導者の「健康異常」との関連を示唆しながらコロナ関連かもわからないと報じ目的さえぼかしていた。新聞記者経験者ならずいぶん腰が引けた報道と感じただろう。

これに朝鮮側の動きからはこれを示唆する動きが一切なかったことを加味すれば、誤報か、偽情報の可能性があると判断できる低レベルの報道だった。

 案の定、中国側がこの報道を否定したと伝えられる。朝日新聞は偽情報を報道してプロパガンダに手を貸したのか、もしくは誤報だったのか、明らかにすべきと思われる。

 なぜなら外国の医師派遣は、朝鮮指導者の健康問題がテーマになったとき必ずと言っていいほど付いてくる常套手段であるからだ。朝日新聞が偽情報を垂れ流したまま説明しないならプロパガンダに加担した疑いが強くなる。

「病気にさせて薬を与える」

 今回のブラックプロパガンダと関連して、もう一点指摘して置かなければならないことは文在寅政権の姿勢だ。

 確かに文在寅政権の大統領府は一貫して「健康異常説」を否定した。

 しかし、「デイリーNK」はソウルで活動している組織だ。情報機関の管轄下にあるプロパガンダのための別動隊だ。「デイリーNK」がCIAと緊密な全米民主主義基金(NED)から毎年資金援助を受けていることは秘密ではない。NEDはCIAが行ってきた他国の政権転覆などの非合法活動を合法的に行うためにレーガン政権が立ち上げた機関だ。韓国は米国の海外工作機関から資金援助を受ける組織が情報機関との関連なしで独自で動ける国ではない。

参考までにNEDによる「デイリーNK」への資金援助の一覧表を掲載して置く。(ウィキペディアより)

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足元のプロパガンダ機関が流した情報を青瓦台が否定している不思議な構図だ。

 米国主導のプロパガンダに対する文在寅政権の抵抗なのか?もしくは他の政治的目的を狙った演出なのか?

 可能性は後者だ。「病気にさせて薬を与える」とは朝鮮の諺だ。このプロパガンダは朝鮮の指導者が姿を現した時点で終わるのは自明。「健康異常説」がねつ造であることをはじめから承知している文在寅政権が「健康異常説」を否定する三文芝居で、朝鮮側の信頼を得ることで米韓が実現させようとする朝米、南北対話再開の足場を築こうとした可能性がある。米韓が朝鮮の中枢情報に接近できないことは米国の元情報関係者がこぞって認める事実だ。青瓦台は一貫して金正恩委員長が東部の元山にいるとコメントしていたが、表れたのは西部の順川であったことは、韓国の情報機関が朝鮮内部の大きな行事もまともに知ることができないことを示している。

 金正恩委員長の「健康異常説」をでっち上げたブラックプロパガンダは米日韓の間では一定の広がりを見せたが、国際的に見れば影響力は大きく落ちている。朝鮮を貶め何らかの政治的目的を追求するブラックプロパガンダが成功する余地は失われている。(M.K)