「強」対応招く愚かな圧力
朝鮮の度重なる警告にもかかわらず、バイデン政権と文在寅政権による米韓合同軍事演習が強行されたことを契機に、朝鮮が党8回大会で示した「強対強」の対米政策が実行に移されている。
金與正党副部長の談話(3月15日)を皮切りに、2日後の17日には崔善姫朝鮮外務省第1次官が談話を発表した。また3月25日には戦術誘導弾の発射実験が行われ、「国連決議違反」「制裁強化」を云々する米国を非難する見解が、李炳哲党書記(26日)、チョ・チョルス国際機構局長(28日)から矢継ぎ早に示された。
この過程で示された朝鮮側の姿勢は、軍事経済的圧力を強める一方、朝鮮をなだめすかしながら、「北朝鮮非核化」のための関与の道を開こうとした米韓にとっては予想外の反応であったと思われる。バイデン政権は、米国の周辺大国まで巻き込んだ圧力に朝鮮は抗しきれないとみていた節がある。朝鮮側の戦争演習などに対する強対応は米韓の淡い期待と判断がいかに愚かなものであったのかを如実に示した。
金與正党副部長は談話で、「暖かい3月」ではなく「戦争の3月」「危機の3月」を選択した文在寅政権と対坐する必要はないと言い切った。また崔善姫第1次官は、米国の対朝鮮敵視政策が撤回されない限り、米国の接触の試みを無視すると指摘、シンガポールやハノイでのような機会を二度と与えないと述べ、「米国と対座しても大事な時間だけが無駄になる」と強調した。
さらに李炳哲党書記は、バイデン大統領が朝鮮の戦術誘導弾実験を「国連決議違反」などとのイベたことに関連、「わが国家の自衛権に対する露骨な侵害であり、挑発である」指摘、交戦相手が朝鮮の前庭での戦争演習が「防御的なものなら、われわれも米国の軍事的脅威を米本土で制圧できる堂々たる自衛的権利を持たなければならない」とまで述べている。一方、チョ・チョルス国際機構局長は国連安保理の二重基準を厳しく非難した。
朝鮮のこのような姿勢の表明は、制裁に、コロナによる国境封鎖、自然災害に“苦しむ”朝鮮は、実は“対話を望んでいる” とする米韓当局の見方が、朝鮮の現実から大きく乖離した愚かな推論に過ぎなかったことを示すものだ。
迎撃不能な新型戦術兵器
米本土を打撃できる核抑止力を備え、制裁を正面突破する朝鮮に米国の恫喝と圧力はこれ以上役に立たない。米国が振り上げる棍棒は朝鮮が核強国として浮かび上がり地域情勢を主導する朝鮮半島ではすでに使い物にならない古びた棍棒に過ぎない。
朝鮮側の発表によれば、新しく開発した新型戦術誘導弾は、すでに開発された新型戦術ミサイルの核心技術を利用して弾頭の重量を2.5トンに改良した兵器システムで、朝鮮東海上600キロ水域の設定されたターゲットを正確に打撃したという。また2.5トンの弾頭を600キロ以上運ぶ改良型固体燃料エンジンの信頼性を実証し、低高度滑空跳躍型飛行方式(プルアップ)の変則的な軌道の特性も再実証した。
現時点で最先端の単距離精密誘導弾と言える。
聯合ニュースは25日、「ミサイルは射程と高度からロシア製短距離弾道ミサイル『イスカンデル』の北朝鮮版と呼ばれる『KN23』の改良型、または戦術地対地ミサイル『ATACMS』の可能性がある」と報じた。「ATACMS」は韓国にも導入委されている米国製単距離ミサイル。韓国紙のなかにはこのミサイルが“最新鋭”であるかの如く読者を騙す新聞もあるが、「ATACMS」は速度、射程距離で朝鮮の戦術誘導弾に遠く及ばないばかりか、プルアップ機能も備えていない。これは米国自身自覚しており、陸軍は2007年にプログラムを終了、レイセイオンなどによる、「ATACMS」に代わる「ディープストライク」の開発に取り掛かっている。実用化は2023年とのこと。
つまり単距離ミサイルで米国は朝鮮よりも大きく遅れた後進国に過ぎない。
朝鮮の新型戦術誘導弾は迎撃不可能というのが大方の専門家の指摘。一部で迎撃可能だと分析する向きがあるが、「米国世界一」の神話にとりつかれた愚か者の強弁に過ぎない。
韓国軍部は新型戦術誘導弾を追跡しきれなかった。
飛行距離が450キロだという発表がそれを示している。残り150キロは追跡しきれず失探したのだ。
新型戦術誘導弾の飛行特性から見て、450キロの時点で高度10キロ程度まで降下し、再度エンジンに点火、極超音速のスピードで目標を打撃する。
韓国の米軍基地と釜山海軍基地などが照準に収められる。米軍基地もさるものながら釜山海軍基地は米空母、原子力潜水艦も寄港できる戦略的兵站基地である。釜山が無防備にさらされることは大きな脅威である。極端に言えば、戦争にならないからだ。
このように朝鮮の新型戦術兵器はICBMとともに、強力な戦争抑止力だ。
米国の敵対政策が続く限り朝鮮の核抑止力は高度化される。すでに米国のアドバンテージは失われている。(了)