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【解説】韓国軍部「交信傍受」を自ら否定、「脱南越北」も不可能!軍発表に「陰謀論」も

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 韓国の公務員A氏(便宜上A氏とする)が朝鮮の領海に不法侵入し、取り調べに応じず射殺された事件と関連して、▲A氏は「脱南越北」を目的に北に向かった▲射殺は海軍系統の上部の指示によって行われた▲射殺後遺体を焼却したーとの韓国軍部の発表に証拠が全くないことが、日がたつにつれて明らかになっている。
 韓国軍部は、この情報は朝鮮の「無線傍受」によって得たと公言し、信ぴょう性を付与するため、新型コロナウィルスの流入を防ぐためとのストーリーを作り上げ、朝鮮を「蛮行」「応分の対価」などの挑発的言辞をもって非難した。
 しかし、北側が南側に送った通知文で、上記南側発表を、「なんの証拠を基に」「一方的憶測」と指摘、強い遺憾を表明したことを契機に、発表の信ぴょう性に疑問符が付くことになった。
 慌てた韓国軍部は、様々な口実を設けて当初の発表を大きく修正、もしくはなかったことにして揺らぐ信ぴょう性に歯止めをかけようと必死になっている。しかし、日がたつにつれて軍部発表を裏付ける証拠、根拠が皆無であることが露わになる一方、軍の発表にはあまりにも疑問点が多く怪異で、「陰謀論」まで浮上している。
「脱南越北」は不可能
 まず、軍は、公務員A氏が「脱南越北」を目的にしていたと強弁しているが、説得力がなく、説明できない疑問が数多く残っている。
 「脱南越北」の動機について、軍は3000万円ほどの借金をあげている。公務員という安定した職業についており、返済不能でもないことを考えれば、それだけで「越北」動機にはなりえない。借金が動機だとしたら韓国には「脱南越北」希望者がいくらいてもおかしくない。
 また、A氏と同じ船・「ムグンファ10号」に勤務していた同僚は、海洋警察の調査に対して、潮の流れの方向と速度から見て、救命チョッキと浮遊物で北の海域に入るのは「不可能」と口をそろえる。事実A氏が行方不明になったところから発見されたところまでの直線距離は38キロ。小舟も操作を誤れば転覆しかねない潮の流れに逆行して泳ぐのは水泳選手でも無理というのが地元住民の証言。さらにA氏が行方不明になってから発見されるまでの時間は、28~38時間。米国の特殊救助部隊の資料によれば、当時の海水温度20度なら2~7時間で意識を失い、死亡に至る時間は2~40時間だという。
 このため、韓国のマスコミ「ニュース1」は「誰かが牽引して行かなければ38キロを移動できない」との専門家の証言を報道した。また、9月29日の時点で「自らの越北」で「泳いだ」と強弁していた海洋警察は、10月8日の国政監査では、「捜査中」「国防部の資料を参考にした」という返答を繰り返し、姿勢を後退させた。
 実際に不可能なのに、これを無視して軍が「脱南越北」を強弁していることが「陰謀論」浮上の根拠になっている。
「『射殺』について言及した内容は全くない」と自ら否定
 二つ目に、北側の「上部の射殺指示」についてだが、当初(9月24日)軍は、「『射殺』について言及する北朝鮮軍の交信内容を、傍受を介して確保した」と発表していた。
 ところが軍部は29日に、24日の説明を自らが覆す。経緯はこうだ。
 29日、軍部は国会の国防委員会と情報委員会で調査結果を報告した。軍部の報告内容は即時参加議員によってマスコミにリークされた。聯合ニュースは、「22日午後9時から、北朝鮮海軍司令部を通じて『射殺せよ』という命令が下され、大尉級の軍人が『再び尋ねる。射殺ですか。本当ですか』と聞き返し、その後の9時40分頃に現場で『殺された』という報告が上層部に上った」と報じた。
 しかしなぜか軍部は、即時「韓国軍が獲得した多様な出所の諜報内容から、「『射殺』について言及した内容は全くない」とし「韓国軍は断片的な諜報を総合的に分析し、その後関連状況を確認した」と釈明、報道を否定した。
 このように韓国軍部は、9月29日の時点で、「交信傍受」を「諜報を総合的に分析」した結果と言い換え、「射殺指示」も「言及した内容は全くない」と、自ら否定するに至る。誰の指示で当初の発表を否定したのか定かではないが、「交信傍受」と言わないのは北側の警戒心を呼び諜報活動に支障が出るためとする奇妙な説明に終始する。いったん「交信傍受」と発表した経緯を考えれば支離滅裂な説明と言わざるを得ない。
「遺体棄損の写真を確保」はただの「光の写真」だった
 三つ目に、遺体の焼却についてだが、9月29日の国会報告後、議員の情報を基にマスコミが「射殺の場面と火で毀損される場面を軍が写真で確保した」と報じると、「事実無根だ。見えない遠距離海域で起きた状況をさまざまな諜報で精密分析して再構成している」と否定するありさまだ。国会には「写真で確保した」と報告しておきながら、それが報道されると色をなして「事実無根」と否定しているが、軍部は本当に「写真を確保」しているのか?
 この疑問は10月8日の国政監査で明らかになる。
 元仁哲合同参謀議長は質問に、「遺体焼却映像ではなく光を観測した映像だが、映像ではなく写真を見た」と答えたのである。つまり「火で毀損される場面を軍が写真で確保した」との、29日の国会報告を「光を観測した映像(写真)」と後退させた。つまり証拠となる写真は存在しないのである。
 このように、A氏の「脱南越北」は事実上不可能であり、「無線傍受」を根拠にした北側の「上部の指示」と「遺体棄損」という、韓国軍部の発表には根拠が全くないことが明らかにされている。
「交信傍受」は作文か?
 韓国軍部が一度は胸を張って「交信傍受」と大声で叫び証拠があるかの如く騒いだが、上記のようにこれを自らが否定するに至っている。
 その理由は事件の経緯を明らかにした北側の通知文であろう。通知文で北側が「海上警戒勤務規定が承認する行動準則に従い射撃した」と指摘しながら「われわれは南側軍部がなんの証拠を基にわれわれに対して、不法侵入者取り締まりとその過程解明についての要求もなく、一方的憶測で蛮行、応分の代価というような不敬で対決的色彩が濃い単語を選んで使うのか、大きな遺憾を示さざるを得ない」と強調した。
 北側のこの指摘は、射殺は「海上警戒勤務規定」に沿った現場の判断であることを強く示唆、この件にかかわる「交信」を事実上否定したと解釈できる。
 北側と米韓が対峙する最前線では1秒、1分の遅れが命取りになりかねない。不法侵入者の取り締まりをいちいち上部に報告、指示を仰ぐと想定して、「交信」を云々した韓国軍部の発表はあまりにも稚拙ではないのか。
 「交信傍受」は作文か?でなければ「傍受」記録を公表すべきではないか。(了)