敵対政策を維持したまま
「文在寅政権・与党内人物」の政策転換を伴わない「回転ドア人事」、「一抹の期待も幻想も持つ理由がない」
文在寅韓国大統領が、朝鮮と韓国、つまり南北関係を担当する政府重要部署人事の刷新を発表してから1か月以上が過ぎた。しかし、悪化した朝米、南北関係改善の兆しはなく、韓国の進歩、民主勢力は、問題解決のための政策転換に取り組もうとしない文在寅政権に対する非難を強めている。
南北関係担当関連部署は総じて「安全保障チーム」、「外交安保ライン」などと呼ばれているが、文大統領が7月3日に青瓦台国家安保室長、国家情報院長、統一部長官を一挙に交替し、加えて大統領安全保障担当補佐官を増やす人事を発表したのは周知の事実。新安保室長に徐薫国家情報院長、国家情報院長に金大中元政権下で大統領秘書室長を務め南北関係改善に関与した朴智元元野党議員、統一部長官に学生運動出身の李仁栄与党国会議員、補佐官に任鍾晳元大統領秘書室長、鄭義溶国家安保室長を任命した。
この人事は、トランプ大統領が年初から新書外交を展開して追求した、朝米会談再開への試みがとん挫を余儀なくされ、文在寅政権の約束違反が原因の北南共同連絡務所爆破など、南北関係の悪化を受けてなされた。名分は、悪化した朝米、南北関係を改善するというものだが、関係破綻の根本原因である、朝鮮にたいする米韓による敵対政策を維持したまま目先を変えて、あわよくば朝鮮を対話に引き出そうとする狙いが込められている。
同時に、南北関係改善を求める国民世論にアピールすることを兼ねた人事とみられるが、時間の経過とともにこのような狙いは世論に晒され、非難を呼び起こしている。
変わらぬ米国追従
月刊「民族と統一」を発刊している「平和を繋ぐ」は8月号の冒頭に、「文在寅政府の新外交安保ラインになぜ幻想をもつのか」という一文を載せ、「一部では今回の人事に相当期待している。しかし残念だが、結論から言えば一抹の期待も幻想も持つ理由がない」と指摘、その理由として3点を強調した。
- 南北関係は人物の問題ではなく、政策と哲学の問題。青瓦台と政府、与党の重要人物による「回転ドア」人事。変わらなければならないのは、対北政策だが、大統領自身が米国と調整すると表明しているのに変わるはずがない。
- 南北関係を妨害する核心機構である韓米ワーキンググループを存続させては何も期待できない。グループを運営する外交部の人事は除外され、李仁栄新統一部長官は、ワーキンググループは「問題解決機能がある」と強弁している。
- 任鍾晳補佐官も実現していない統一部の、自治体による交流を繰り貸すだけで改善は望めない。
また、「国民主権連帯」は李仁栄新統一部長官の業務開始と関連して発表(7月28日)した論評で「南北関係を解こうとするなら、文在寅政権は韓米ワーキンググループを解体して、米国の影響を排して南北合意を履行しなければならない」、しかし、李仁栄新統一部長官は「ワーキンググループを維持」する意思を示していると指摘した。さらに論評は人事の目的が「朝鮮を幻惑」してICBM実験などの軍事行動を抑制することにあり、これは再選を望む「トランプ大統領のための措置」とも指摘した。
文在寅政権はローソクデモの結果生まれた政権で期待が大きかったが、最近政権に対する幻想が剥がれ落ちている。内政問題とともに、南北関係悪化が支持率低下の一因と指摘されているのは偶然ではない。
ローソクデモで登場した文在寅政権への期待の剥落は、国民世論を必然的に、反米に向かわせており、今後の推移が注目される。(了)