対話ラブコールを送っているのは朝鮮ではなく米韓
米国の朝鮮担当特別代表を兼務するビーガン国務副長官が7日に韓国を訪問する。
この訪問と関連して、韓国のマスコミは「板門店で北朝鮮と水面下で接触」、「米朝対話のきっかけ」になるかのような推測報道に余念がない。
崔善姫朝鮮外務省第1次官が4日に談話を発表し、「米国と対坐する必要はない」と突き放しているにもかかわらず、根拠のない推測報道が続いている。
韓国の情報機関は、朝鮮が北南共同連絡事務所を爆破したことと関連し、「コロナ禍」による「経済的困窮からくるラブコール」などという説を流布しているが、ビーガン訪韓を前に朝鮮との接触説が吹聴されているのは、ラブコールを送っているのは朝鮮ではなく、米韓であることを示している。
文在寅大統領が6月30日に突如米大統領選挙前の朝米首脳会談の必要性に言及したかと思えば、オブライエン米大統領補佐官も同日VOAと会見し、「北朝鮮が・・・持続的かつ実質的な交渉に復帰することを引き続き求める」と述べた。またこれ以前に、北南共同連絡事務所を爆破に至る過程で、韓国が特使派遣を提案し朝鮮に拒否されたことも広く知られている。
対話ラブコールを送っているのは朝鮮ではなく米韓であることは明らかであり、朝鮮の「経済的困窮からくるラブコール」なる説が、根拠のない、ご都合主義のプロパガンダに過ぎない。にもかかわらず日本のマスコミがこの幼稚なプロパガンダを録音機のように繰り返していることに驚かざるを得ない。情報収集能力も、分析力もなく、ただただ、反朝鮮政治宣伝に明け暮れる体たらくは救いようがない。
大統領選挙前にサプライズを・・・
米韓が恥も外聞もなく、卑屈な対話ラブコールを朝鮮に送っているわけは明らかだ。
第一は、米大統領選挙前に対朝鮮外交でサプライズを用意して、厳しい選挙戦で勝利するためだ。
文在寅政権の南北政策を代弁している「ハンギョレ」(7.3)が、文在寅大統領が提唱した朝米首脳会談と関連、寧辺の核施設廃棄と米国の部分的制裁解除を再び持ち出し、それが可能であるかのように報じたことは偶然ではない。部分的制裁解除で朝鮮を対話に引き出そうとする意図が垣間見える。
ハノイ朝米首脳会談で議論された寧辺核施設廃棄VS部分的制裁解除は、米国が「プラスα」を要求し、朝鮮の体制崩壊を狙う「リビア方式」を持ち出したことによって日の目を見なかった。この点と関連、朝鮮外務省の金桂官顧問は今年はじめに、トランプ大統領が送った親書に関連する談話で、「平和的人民がなめる苦労を少しでも減らすために、一部の国連制裁と国の中核的な核施設を丸ごと換えようと提案したベトナムでのような協商は二度とないであろう」(1.11)と指摘した。崔善姫朝鮮外務省第1次官も4日の談話で「我々の非核化措置を条件付きの制裁緩和と換えられると見るのは「空想」と指摘している。
ハノイで自らが壊した寧辺核施設廃棄VS部分的制裁解除を持ち出しても時すでに遅しで、寧辺の核施設廃棄という治績をトランプ大統領に与えることはない、ということだ。
去る6月2日、談話を発表した李善権朝鮮外相は「二度と米執権者に治績宣伝の種という風呂敷包みを与える」ことはないと明言している。 米国が大統領選挙前のサプライズを目的にラブコールしても朝鮮側が応じることはない。
対話で時間を稼ぎ体制崩壊の機会をうかがう
米韓が恥も外聞もなく朝鮮に対話ラブコールを送っている理由は、第二に、朝鮮の手足を縛り、一方的非核化を迫る関与の糸を繋ぐことに目的がある。
朝鮮側が昨年末の党会議で、米国が敵対政策を撤回しない限り、非核化交渉は行わないとの姿勢を鮮明に打ち出した。米国の圧力と制裁は自力更生で正面突破し、核抑止力を向上させ国の安全を守るというものだ。朝鮮側のこの政策決定によって朝米対話の糸は切れ、6月16日の北南共同連絡事務所爆破で南北関係も断絶状態になり、関与の道は消え去った。
米韓が懸命に、朝鮮に対話ラブコールを送っているのは、朝鮮を抑制しけん制する手段をすべて失ったためだ。
米国にとって、朝鮮がICBM実験凍結などを解禁し、核武装を増強させることは最悪の事態で、絶対に避けたいところだ。そのためには朝米対話の再開が必要で、対話で時間を稼ぎつつ、制裁の強化で体力を奪い、体制崩壊の機会をうかがうというのが狙いであろう。
朝鮮外務省の対米協商局長は3月30日に発表した談話で、「米国が熱心に提唱する対話の再開も結局はわれわれが行く道を立ち止まらせるための誘因策に過ぎない」と指摘した。
また、崔善姫朝鮮外務省第1次官は「首脳会談の合意も眼中になく対朝鮮敵視政策にしつこく執着している米国と、果たして対話や取り引きが成立するだろうか」としながら「米国が、いまも協商などを持って我々を揺り動かすことができると思うなら誤算である。われわれは既に、米国の長期的な脅威を管理するためのより具体的な戦略的計算表を練っている。誰かの国内政治日程のような外部的変数に従って、わが国家の政策が調節、変形されることはないであろう」と指摘した。
朝鮮は自らの戦略的計算表に従い進むのであって、それを抑制し、けん制する米韓の対話ラブコールには応じられないと、明白に宣言している。(了)