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【解説】韓国で高まる積弊淸算要求、問われる文在寅大統領と与党の姿勢

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 韓国の与党共に民主党が総選挙で大勝したのを契機に国民の中で積弊淸算要求が急速に高まっている。積弊とは李明博朴槿恵の反共保守政権下で積み上げられた弾圧、不正腐敗、真相隠蔽、南北対立等々の弊害のこと。

最後の理由もなくなった

 朴槿恵弾劾後、政権交代青瓦台の主人に収まった文在寅大統領は国民の声に押されて積弊淸算を公約の一つに掲げた。

しかし、文在寅政権発足3年、積弊淸算はまったく進んでいない。その理由のひとつに、政権の座から追われたといえ旧政権党の影響力が官界、財界、検察などの治安当局に強く残り反対が激しいことがあった。しかしより根本的には、文在寅政権・与党が積弊を体現する旧与党の反対に立ち向かうのではなく、様々な口実を設け妥協を図る軟弱で消極的な姿勢を一貫させたためだ。

 その口実の一つが、旧与党を制圧できる国会の勢力不足。4.15総選挙で憲法改正以外なら何でもできるという300議席の内180議席を得たことで口実は消え去り、積弊淸算に対する文在寅大統領と与党の姿勢が正面から問われることになった。

 4.15総選挙直後の19日、ツイッターに投稿された、セウォル号沈没事件(2014.4.16)で命を失った高校生の母親が書いた一文だ。朴槿恵政権下で起きた大型旅客船の沈没事件で、修学旅行で利用した多くの高校生の命が奪われた悲惨な事件。朴槿恵政権は真相解明と責任者の処罰を求める遺族と国民の声に顔を背けた。

 セウォル号沈没事件の真相解明と責任者の処罰は、文在寅政権下で解決が待たれる積弊淸算の課題であったことは言うまでもない。

 ツイッターに投稿された母親の一文は大きな反響を呼び現在までもシェアされ続けている。全文を紹介する。

 

6年前国会前で路宿した時

真相究明のために交渉しないで

戦ってくれと要請したとき

民主党

議員の数が少ないから、と言った。

国民が総選挙で全幅の支持を寄せ

議席数を増やしてあげたとき

なぜ、まだ消極的なのかと、言ったら

政権党ではないから、と言った。

国民的ローソクデモで朴槿恵が弾劾され

民主党が政権を取っても

真相究明が進まない理由を聞くと

統合党(野党)が妨害するから、と言った。

もうその最後の理由もなくなった。

国民は、遺家族は、私たちの子供たちは

できるすべてのことを尽くした。

あとは、民主党と政府がやることだけが残った。

本当に重い責任を果たすべきだ。

 

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国民の厳しい指弾を免れない

 積弊淸算はセウォル号沈没事件に限ることではない。5月18日の光州民衆抗争40周年控えた16日には、5.18光州抗争40周年記念事業市民推進委員会主催による、車両デモが行われた。当時新軍部を率いて市民虐殺を指示した全斗煥元大統領の処罰と虐殺事件の真相解明と背後勢力の究明を要求したデモの先頭には、後ろ手に縛られた全元大統領の造形物が掲げられ、多くの国民の支持が寄せられた。40年前の光州虐殺事件はいまだに首謀者の処罰と真相解明が待たれる最大の積弊だ。

 4.15選挙後クローアップされている全国6万人以上の教員を網羅した全教祖の合法化問題も積弊淸算の重要な課題。というのも2013年10月に全教祖を非合法化した朴槿恵政権の暴挙が国家情報院の巧妙な工作によって仕組まれたことであったことが明らかにななったためだ。このほかにも懸案である検察改革など、積弊淸算の課題は枚挙にいとまがない。

 文在寅政権・与党がこの積弊淸算の課題にどう取り組むのか注目されている。

多くの進歩・民主化勢力は国民が圧倒的な国会議席を与えたのは、改革と民族統一を進めろという国民の命令だとしながら与党の尻を叩いている。

というのも文在寅政権・与党は圧倒的な国会議席を得たにも関わらず遅々として積弊淸算を進めようとしていないからだ。

 周知のように当時の文在寅共に民主党常任顧問は朴槿恵弾劾を要求するローソクデモが最高潮に盛り上がっているときも、朴槿恵弾劾ではなく挙国中立内閣樹立を提案、ローソクデモの弾劾要求に同調しなかった。文在寅大統領がローソクデモを指導したわけではない。国民世論の力で朴槿恵弾劾が実現した後、ローソクデモの果実を手にしただけだ。

 大統領就任後積弊淸算を口にしながら遅々として進めなかったのはこのためだ。唯一の成果として挙げられるのは検察改革のための高位公職者犯罪捜査処(公捜処)だが、これも野党の反対に動揺を繰り返したあげく、国民の大規模デモに押されてやっとのことで国会を通過させた。

 国民が何かを要求すれば、議席数が少ないからと弁明し、国民が支持して院内第1党に押し上げたら、政権を取っていないからと弁明し、ローソクデモで政権交代を実現させたのに、議席数が院内過半数に満たないのでと、弁明してきたというのが、韓国の進歩・民主化勢力の評価だ。

 国民の支持で国会議席の三分の二に迫る議席を得た状況で積弊淸算要求に背を向けるなら国民の厳しい指弾を免れない。

 上述した母親の悲痛ともいえる叫びに共感して多くの市民が励ましの言葉を送ったが、ある市民は次のような一文をツイッターに残した。

「いったいこの悲鳴に耳を傾ける民主党の議員は何人いるのか?民主党は耳を傾けて国民が願うことを解決してこそ、再執権できるということを肝に銘じるべきだ」