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【解説】一日で破綻したCIAによるブラックプロパガンダ、米大統領自身が否定

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 金正恩委員長の「健康異変説」は、トランプ大統領が23日CNNの報道は「正しくない」と述べたことで、でっち上げであったことが明らかになり破綻した。米CIAが仕掛けたブラックプロパガンダ米大統領によって否定されるという珍しいことが起こっている。

CNNの報道からわずか一日で局面が変わったことを理解できない米日間の一部のメディアは引き続き「健康不安説」を煽っているが、朝鮮に敵対する右翼、強硬勢力の「希望を込めた空想の世界」を描くマスタベーションに過ぎない。

 金正恩委員長の「健康異変説」は、でっち上げに基づく稚拙で粗雑な黒色宣伝と言えるが、よく観察してみると米CIAによって急造されたプロパガンダであったことがわかる。

「デイリーNK」はCIAの飼い犬

 「健康異変説」は「デイリーNK」によって20日に流された。

「デイリーNK」は2007年に韓国の情報機関によって作られたインターネット情報サイトで、朝鮮の「民主化」を目標に掲げた別動隊だ。2009年からは全米民主主義基金(NED)からの多額の資金援助を受けている。NEDの公式ウェブサイトによれば、2015年に20万ドル、16年20万ドル、17年25万ドル、18年27万ドル、昨年は40万ドル。

 一方NEDは「他国の民主化を支援する」との名目を掲げているが、実態はCIAが行っていた政権転覆などの非公然活動を公然と行う目的で、レーガン政権時の1983年に設立された。このためCIAとはきわめて密接な関係にあり、利用できる他国の政党、団体、個人などに資金援助をしてきた。出資者は米議会だが、米国内、他国の団体への資金援助は国務省が賄っているとされる。

 「デイリーNK」はCIAと緊密なNEDを通じて多額の国務省資金を提供され飼いならされた飼い犬と言えよう。

 「手術を受け重体」との「デイリーNK」の情報を受けCNNは「朝鮮労働党委員長が手術を受けて重篤な状態にあるという情報があり、米政府が状況を注視している。この情報を直接的に知る立場の米当局者が明らかにした。」と報じた。CNNがいう「米当局者」はCIAのこと。

「デイリーNK」の情報をCNNだけが拾い上げ翌21日に迅速に報道したのは、朝鮮に対する典型的なブラックプロパガンダの手法だ。韓国での第一報が親米右翼の「朝鮮日報」であったり、受けて拡散するのが「ニューヨークタイムズ」であったり「ワシントンポスト」であったりはするが、いつもこのパターンで黒色宣伝がなされてきた。

 しかし今回の黒色宣伝は今までとは異なり、わずか1日で破綻した。それも米軍当局者とトランプ大統領によって、である。米統合参謀本部ハイテン副議長は22日、国防総省で記者会見しCNN報道に関し、「金氏が現在も核戦力を含め全軍を完全に掌握していると推察している」と述べ否定した。これに続きトランプ大統領も翌23日にCNN報道を「正しくない」と否定したのである。

黒色宣伝破綻の背景

CIAが「デイリーNK」を使って急造したプロパガンダがわずか1日で破綻した背景について二つほど考えられる。

 一つは朝鮮の沈黙のメッセージだ。

 トランプ大統領が18日に朝鮮から「好ましい書簡」が届いたと述べていたことは周知の事実。これに対し朝鮮は19日に外務省報道局 対外報道室長が談話で否定した。相手にはしたくないが事実は知らせるべきとの判断から出された談話で、朝米両首脳の関係を「利己的な目的に利用」されてはならないと指摘していた。婉曲に注意を喚起した自制された内容であった。

 これに対し米国が「金正恩委員長重篤」とのブラックプロパガンダを仕掛けた形だ。

 朝鮮は沈黙を守っているが、両首脳間の良好な関係は「高く評価される」(金與正第1副部長談話3月22日)としていた判断が変化するのは避けられない。両首脳間の良好な関係が米国の挑発によって壊されれば朝鮮にとってトランプ大統領の再選に配慮する必要は消え失せよう。朝鮮はすでに「世界は遠からず、朝鮮民主主義人民共和国保有することになる新しい戦略兵器を目撃することになるであろう」との姿勢を明らかにしている。これと関連して「昨年7月に見せた潜水艦が太平洋に浮かびSLBM実験を行い固体燃料で作ったICBMが高角ではなく正常発射され米大陸を越え大西洋に落ちる日が来るかもしれない」との指摘も出ているが、実行された場合大統領選挙にどのような影響を与えるのだろう。

金正恩委員長の「健康異変説」をでっち上げ直接挑発した代価は極めて大きいものになると思われる。

トランプ大統領が早々にCNN報道を否定し、「北朝鮮および金正恩氏とは良好な関係にある。金氏が健勝であることを望む」と語ったことは偶然ではあるまい。この発言を朝鮮がどう受け止めたかは定かではないが・・・。

 今一つの背景は、当初から文在寅政権が否定したため「健康異変説」が米日間の親米反共勢力を除いて、西側諸国にさえ広がらなかったこと。

 文在寅政権が「健康異変説」を否定したのは、4.15総選挙で示された民意が南北関係の改善を望んでいることが明らかなためだ。朝鮮に対する根拠のないブラックプロパガンダが受け入れられなくなっていることは、南北対立を助長し激化させることで長い間保守政権を維持してきた、現在の親米保守野党を惨敗させたことを見れば明らかだ。

 文在寅政権が当初から「健康異変説」を否定したのは、CIAにとっては予想外のことであっただろう。韓国の世論を読み間違えたことがプロパガン破綻のひとつの原因になったと言えよう。

 CIAによる汚らしいブラックプロパガンダが今後の朝鮮半島情勢にどのような影響を与えるのか予断を許さない。(MK)