制裁、外圧に影響されずに、順川リン肥料工場で
ピョンヤンから伝えられるところによれば、朝鮮で国家的に重視されていた順川リン肥料工場が完成し、核心施設である黄リン電気炉の試運転がまもなく始まる。
試運転が終われば黄リンとリン肥料を大量生産する土台が整えられる
農業で欠くことができない肥料のひとつであるリン肥料の大量生産は食糧などの増産に大きな力になる。
またリンは、電子部品、自動車、医薬品、プラスチックなど広範な産業分野でも利用されており、特に黄リンは高精度の工業製品の生産に必須であるとともに、黄リンを出発原料とした各種誘導品は、食品から最先端分野までに至り生活にも欠かせない。
現在国際的にみて黄リン生産国は米国、中国、ベトナム、カザフスタンの4か国しかなく、原料であるリン鉱石の枯渇が憂慮されている。このため米国は早くから黄リンを戦略物資に指定して原則的に輸出を禁止している。また中国も自国消費に生産を限定している。ちなみに日本にはリン鉱石がなく、黄リンはベトナムから100%輸入していると伝えられる。
朝鮮では黄リンの生産にあたり、原料のひとつであるコークスを使わない無コークス生産のための技術を開発し生産工程を整えた。無コークス黄リン生産が実現すれば世界ではじめてのこと。
順川リン肥料工場建設指揮部の高グァンイル技術分科長はこの点について「われわれ式のリン肥料工業の創設は出発点から他国のコークスか、わが国の石炭か、という深刻な選択を迫られた。・・・われわれの選択は明白で断固としたものだ。完全にわれわれのものでなければそれはすでに他人のものだ。(無コークス生産を可能にする)粘結剤を開発」したと指摘した。(労働新聞2月24日付)
朝鮮では朝鮮労働党第回大会(2016年5月)で、▲戦略的意義をもつ原料と燃料を国内資源で保障する生産技術行程の確立▲豊富な資源と自身の技術で世界的に覇権を握れる分野を開拓して発展させる方針を打ち出していた。
国際的にはリン鉱石の枯渇が憂慮されているものの、朝鮮には豊富な埋蔵量を誇るリン鉱山が複数存在する。黄リン生産が上記方針に沿ったものであることは一目瞭然だろう。特に輸入しなければならないコークスを排除した無コークス生産技術を確立した意味は大きい。経済制裁、外圧に影響されずに、先端工業および農業に欠くことができない戦略物資生産に至ったからだ。